「べ、別に何もねーよ・・・んで、お前の家どこなんだよ」

「えっ!?何で?」

「別に」

「そっか、じゃ…また明日」

馨はそう言うと自転車置き場まだ歩いて行く。
俺はため息をつき、馨とは反対方向に歩き出す。

馨は忘れてしまったらしい・・・
俺は忘れてはいない・・・あの日の事を鮮明に覚えている。
歩いている間に俺は何回ため息をついた事か・・・
家に着き、ドアを開けると・・・親父が立っていた。

「親父・・・」

「よっお帰りー学校はどうだった?」

「別に・・・普通だし・・・って何で居るんだよ、いつもなら居ないくせによ」

「いや~ちょっとな、昔の友から電話があってなぁ~会う事になってな!」

「それで・・・そんなおしゃれする理由がどこに?」

いつもは着ないスーツを着て、髪もセットしてる・・・
珍しい・・・

「いや~その友って言うのは・・・僕の初恋の人でね~ちょっと気合い入っちゃって!」

「はいはい・・・」

「なんだったら僕の昔話を聞かしてやろうか?」

「良い・・・早く行けよ・・・」

「おっ!そうだった!では、行ってくるよ」

親父はスキップをしながら出て行く。
俺はある事を思い出して、親父を追いかける

「親父!!」

「ん?どうした?」

「あの事・・・バレんじゃないぞ」

「大丈夫、その友人は知っているよ」

そう言って妖艶な笑みを浮かべ出て行く。
俺はまた重いため息をつく・・・