1校時。数学。

隣の席になって、初めての授業。

「先生――っ。」

翔汰くんが先生に話しかけた。

「何で数学って難しいんですか――?」

アホや―――――――っ!!!

と思いつつ、カワイイなぁ(笑)と思う。

小学生みたいな質問に、先生は戸惑っている。

そりゃそうだ。

先生は答えた。

「頭を良くするために難しいんだ。」

真面目な顔して、なんというテキトーさ…。

「あ―…わっかんねぇ。
 教えてくれ~…。」

「う、うんっ!!」

私は、あんまり教え方が上手くなくて、

「何て説明したらいいんだぁぁっ?!」

と、何度も言っていた。

そのたび、翔汰くんが笑う。

その笑顔を見るたび、胸がきゅうってなる。

たぶん、私の頬は真っ赤に染まっている。

「美久、お前ウケるなぁ。」

「よ…呼び捨てっ?!」

「あ、言ってなかったな。
 沖縄では、みんな名前で呼ぶんだよ」

「そ、そうなんだ…っ」

「そんな照れんなよっ!!
 こっちまで…照れるだろっ?!」

翔汰くんが真っ赤になってる…。

「翔汰くん、ウケる!!」

翔汰くんは微笑んでこう言った。

「"翔汰"でいいよ」

この一件で、私たちの仲は一気に縮まった。