「言わないつもりでいたんだけど、亜美ちゃんには健太の気持ちわかってほしくてね」

「知って良かったです」

健太も追い掛けて来てくれた。それを聞いただけで十分だった

「オーナー、ありがとうございました」

「またいつでもおいで」

「はい」

私は頭を下げ、由里とライブハウスを後にした

「どうしてこんなにもすれ違うんだろうね」

由里が歩きながら私に言った

「運命なんじゃないかな」

巡り合う運命ではなく、すれ違う運命

この先、何年たっても私と健太は巡り合うことなく、お互いに違う道を歩んで行くんだろう

私の願いも届くことなく、私は違う誰かとまた恋に落ち、結婚して子供を産み、健太のことも記憶の中から薄れていくのだろう

健太、追い掛けて来てくれて、ありがとう…