「亜美・・・」

振り向くと悲しい顔をした凌が立っていた

「ごめんね・・・今日だけ許して・・・」

私は凌に言った

「泣きたいだけ泣け。それで亜美がすっきりするなら・・・」

「ごめん・・な・・さい」

「俺は会場にいるから」

凌は私の頭を撫で、また会場に戻って行った

後戻りなんてできる訳ないのに、何をそんなに泣いているのだろう。自分で健太の手を離したのに・・・

明日、健太は東京へ行ってしまう。もう二度と会うことはない。今日がこれで本当に最後。最後だからちゃんとごめんねって、頑張ってねって言いたい

私は立ち上がり、決意したかのように会場へ走り出した

私が戻ると、ライブはすでに終わっていてみんな会場から出てきていた

みんなの波に逆らい、私は会場の中へ入り、回りを見渡したがもう誰もいなく、残っていたのは凌と坂下だけだった

「凌・・・・」

「終わったよ」

「由里は?」

「楽屋に行くって言って、まだ戻って来ない」

由里・・・どうして楽屋に行ったの?

「ごめーん」

由里が戻って来た

「本郷、今日だけは許してあげて。亜美、健太くんの所に行って」

「えっ」

私はどうしたらいいのか、ゆっくりと凌の顔を見た

「行って来い。そしてちゃんと頑張れって言ってこい」

凌が私の背中を押して、前へ進ませてくれた

「俺は外で待ってる。亜美、待ってるから」

本当は行かせたくないのに、凌の精一杯の我慢なんだろうと思った

「待っててね」

私はそう言って、健太のいる楽屋へ向った