「今日、Blacksはここでライブをするのが最後になります。俺達は明日、生まれ育ったここを離れ、東京に旅立ちます。ここまでやってこれたのはみんなの応援があったからです。これから辛いこともあるだろうけど、俺達は負けないで頑張って行こうと思います。これからも俺達を見守って下さい」

周りから泣き声が聞こえる。行かないで、頑張って、と声が聞こえた

「俺は東京に行くことを悩みました。それは俺の大好きな人がこの町にいるから・・・。今は別れてしまったけど、近くで見守っていたいと思っていました。でも俺は彼女の夢でもあった夢を追いかけることを決めました。今、彼女を守ってくれる人が彼女の隣にいるから、安心して東京に行けます。その人に幸せにしてもらって欲しいと心からそう思います。彼女のために作った曲『Eternity』を聞いてください」

泣かないようになんとか頑張ってきたのに、私の頬をたくさん涙が落ちて行く。健太が私に気付いたのか、こっちを見ている

見ないで・・・

「トイレに行ってくる」

私は凌に言い、手を解き走って外へ出た。ライブハウスの路地裏でしゃがみ込み、私は声を上げて泣いた。健太のことを思うと健太の優しさを思うと、どうして手放してしまったのか、後悔が私を苦しめる。笑って見送ると決めたのに、私はいとも簡単に破ってしまった。来ないほうがよかったのかもしれない・・・

でも本当は会いたかった。最後に健太の顔を見たかった。もう会えない健太にちゃんと『頑張ってね』って言いたかった

それさえ言うことも出来ずに健太の前からまた逃げてしまったんだ