最近、健太をまったく見なくなり、私は少しずつだけど健太のことを考えることがなくなっていた

凌と一緒の帰り

「明日休みだからうち泊まったら?」

「うん?」

「聞いてねぇだろ」

そう言って私の頭を叩いた

「痛っ」

「嫌?」

「嫌じゃないよ、ただ着替えたいかな」

「じゃあ、亜美んち寄ってから行こう」

「うん」

家の近くまで来た時、前方から龍くんと祐介くんが歩いて来た

「亜美ちゃん!」

祐介くんに声を掛けられた

「元気だった?」

「はい」

「祐介くんも元気?」

「うん、元気だよ」

凌が遠慮してか、私の後ろの方で待っていてくれた

「俺ら卒業したら東京行くことが決まったんだ」

「おめでとう」

祐介くんは嬉しそうに私を見て言った

「あれから会ってないの?」

「・・・一度、町ですれ違ったけど、それからは見てないかな」

「一時期、荒れてたけど、いつもの健太に戻ったから」

「・・・よかった」

安心したせいか目に涙が溜まっていく

「亜美ちゃん・・・健太は今でも」

「行くよ」

龍くんが祐介くんの話しの途中、祐介くんの腕を引っ張って歩き出そうとした

「あの、健太を支えてあげて下さい」

私は祐介くんと龍くんに頭を下げた

「わかってるよ」

祐介くんは手を振って行ってしまった

よかった。健太が戻ってくれた。一瞬、優しい笑顔の健太の顔を思い出した

「亜美、行くぞ」

「うん」

凌に呼ばれて、我に返った

健太は健太で前を歩き始めている。私もちゃんと前を向き、過去を振り返らず、これからの凌との未来を考えて行こう。私には私の手を引いてくれる人がここにいる。そう思い凌の横顔を見た

初めて会った4年生の時とはまったく違う顔でこんなに男らしくなった。私達は大人になって行くんだ