凌が私の顔をずっと見つめる。私も目を反らすことなく、凌を見ていた

「嫌じゃない?」

どうしてそういうことを聞くの?私は思わず聞いてしまった

「どうして?」

「川崎さんのことがあったから」

「嫌じゃないよ」

健太のことを気にしている

「俺が忘れさせるから」

そう言って、私に深い深い口付けをしてきた。私の手を握り何度も顔を傾け、息が苦しくなっても止めることなく、凌のキスが続いた

別れる前、会うたびに求められ、それが嫌でどうしようもなかった。また抱かれると前のようになるのだろうか。私の頭の中にそのことが過ぎった

「凌・・・体だけじゃないよね?」

私の目尻から一粒の涙が零れ落ちた

「あの時は、理性を保てなくて俺の欲望だけで亜美を抱いていた。でも今は違う。亜美が愛しくて仕方がねぇ」

「うん・・・」

何があっても、もうこの手から逃げちゃいけない。私を抱くことで健太のことを紛らわせれるなら、私はいくらだって受け止める。そう覚悟を決めた

何度も私の名前を呼び、壊れ物を扱うかのように私を優しく抱いてくれた

私も凌を求め、凌も私を求め、私は凌の愛を噛み締め、私達はひとつになった


いろいろな思いが私の中を駆け回り、終わった後自然に涙が出てきてしまった

「なんか、いろんなこと考えちゃって」

「俺さ、別れてから何度も何度も諦めようって、合コンも行ったしナンパもしたし。でもやっぱり亜美のこと思い出して、結局途中で逃げ出して。最後はやっぱり亜美なんだ。川崎さんから奪ったことは悪いと思ってる。亜美にも辛い思いをさせた。でも離れてわかったことがたくさんあるんだ。失ってから亜美のことよくわかったんだ。だから今、亜美のことを誰よりも大事に出来るんだ」

凌は照れ臭そうに話してくれた。私と別れてからいろんな思いが凌にあったと思う

「だから、ずっとこれからも何があっても俺を信じてほしい。俺は二度と亜美を離さない」

真剣な顔をして私に言った。この目に嘘はないと思った。きっと大切にしてくれるだろう。二度と私を離さないでいてくれるだろう

凌だけを信じ、凌だけにすがっていればいい。凌のそばで一緒に笑っていよう