修学旅行の帰りとなり、もうすぐ飛行機は空港に着く。旅行中、健太から着信とメールがあったけど私は電話に出ることも、メールを返すこともしなかった

今日このまま凌と2人で健太の所に行くことにした。健太のマンションには荷物もあるし、ちゃんと健太に言わなくてはいけない

「大丈夫か?」

空港に着き、タクシーの中で凌が心配そうに私を見た。心臓がドキドキして、変な汗が出る

「ここ?」

マンションの前に立ち、上を見上げてみる。健太の部屋の電気が付いていた。もう帰って来ている

健太はどんな顔をするだろう。きっと悲しむ。でもそれをわかってて私は今、凌といるんだ

廊下を歩くと私達の足音だけが聞こえ、目の前には玄関のドア。私の呼吸が速くなる

ピンポーン

中から私と凌の姿が見えているはずだ

ガチャ

ゆっくり顔を上げて健太を見ると、笑顔のない健太がいた。私と目を合わせず

「入って」

それだけ言い、中に入って行ってしまった

リビングで2人で立っていると

「座れば」

そう言われ、私達はソファへと腰を下ろした

「亜美、荷物まとめれ」

健太は淡々と言い、こちらを見ないで私に言った

私は寝室に行き、自分の荷物を一つにまとめた。そしてリビングに戻ると

「川崎さん」

凌が健太を呼んだ

「わかってるから、何も言わないで出て行ってくれ」

拳を握って、どこか一点を見つめ健太が言った。その姿が私には痛く、何も言えない自分が情けなくて、『ごめんね』も言えず、ただ涙を堪えることしかできなかった

「すいませんでした」

凌が深々と頭を下げ、私の手を握り健太の家から出て来た

すすり泣きをしている私の頭を撫でながら

「俺がいるから」

優しく私を見つめた。私はこの手を選んだんだ。今さら後悔しても健太は傷ついている。きっと健太は私を憎んでいる。あんなに優しくしてくれた人の手を私は離したんだから・・・・

ひどい女だと恨んでほしい・・・私は恨まれて当然のことをしたのだから。きっと健太は凌のように2度と戻って来ることはない

それでいい

健太…ごめんなさい