ここにはいないって何?

「ここにいないってどういうこと?」

「東京に行くと思う」

東京…

「亜美がいれば川崎さんも自分の夢に悩むと思う」

凌が言っていることがわかる

「俺はいつでも亜美のそばにいれる。どんな時でも・・・」

下を向いていると私の握っている拳に涙が落ちていく。健太の夢は私の夢でもあった。でも実際東京に行ってしまったら、私と健太はどうなるのかわからない

健太の夢を私が引き止めることは出来ない。今でも私と住んでいることで曲作りを邪魔しているのかもしれない。一人になる時間を私が奪ってしまったから・・・

「凌、私・・・」

「俺とずっといよう」

そう言って凌は自分の首から別れた時、私が上げたネックレスを外した。そのネックレスには、私が返した指輪と凌の指輪がぶら下がっていた

そして、私の手を掴み私の左指にあの時の指輪を付けた

「ずっと持ってたの?」

「そう」

懐かしかった。この指輪を返した時、私は凌と本当の別れを決めて返した

「亜美は俺が幸せにする。だから川崎さんを解放してやれ」

凌は泣いている私を引っ張り、自分の胸に私の顔を押し付けた

これでいいのかもしれない。健太の夢を叶えたい、そう思った

「ちゃん2人で川崎さんに話そう」

私は頷き、凌の胸で声を殺し泣いた

健太のことを考えると切ないけど、自分で決めたこと。絶対悔やんじゃいけない

もう凌から離れられない。健太を捨ててまで凌のとこに戻ったんだから。私は凌に寄り掛かり、私の手を握っている凌の手を眺めていた