やさしい手のひら・前編【完結】

「彼女出来たんだ」

「そうみたい」

「亜美、昨日知ったんでしょ?」

由里は昨日の私の態度でわかったみたいだ

「昨日の帰りにね、凌が健太のとこまで送るって言われて。断れないでいたら、あの子が玄関にいて、それで凌の口から付き合ったって聞いたの」

「あの子、亜美のこと気にしてるね」

「もう関係ないのに」

不安な気持ちもわからない訳ではない

「亜美どう思った?」

「何が?」

「本郷に彼女が出来たこと」

「びっくりしたかな」

「それだけ?」

由里は私の顔をジッーと見つめた

「それだけだよ」

健太を大好きな気持ちは決して嘘じゃない。ただ何かわからないけど凌から聞いた時、胸が痛かったんだ

「幸せになってほしい」

「亜美待ってても戻る訳じゃないしね」

「うん、戻ることはない」

これでよかったんだ。あの子のことを大切にしてほしい。そう思っていた