やさしい手のひら・前編【完結】

「そっか。よかったね。大事にしてあげないとね」

「でも俺…」

「凌先輩待って下さい」

息を切らし凌の彼女が走って来た

「私なんていいから、早く彼女の所に行ってあげて」

私は凌に背中を向け、一人で歩きだした

凌が誰と付き合おうと私には関係ない。私はそう思い、走ってライブハウスへ向かった

息が苦しい。さっき凌が言ったことが頭から離れない

ライブハウスに着き、みんながいる楽屋へ入って行った

「こんばんは。あれ?咲ちゃん来てないの?」

由里が一人で楽屋にいた

「亜美遅い。私一人だったんだよ」

「ごめんごめん」

リハ室を見ると、健太が歌っていた

「健太くん電話待ってたよ」

「あ、うん。一人で走ってきちゃった」

「本郷となんかあった?」

「え?なんもないよ。ある訳ないじゃん」

「亜美が走るなんてありえないからさ」

由里は何か気付いたのか、私を不思議そうに見ていた

「走ったから喉乾いた」

私はドアを開け外にある自動販売機に行き、お茶を買った。その場で一気にお茶を飲んだ

動揺することないんだ。凌に彼女ができただけ。今までいなかったことがおかしいぐらいで私には関係ない


楽屋に戻るとリハ室からみんな戻って来ていた

「なんで電話しないんだよ」

健太が私の方に来た

「練習中に呼び出すの悪いと思って…」

「そんなこと気にすんな。今度からちゃんと電話すること」

「うん、わかった」

私の頭を撫でてくれた

「もう終わったの?」

「終わったよ。帰るか?」

「うん」

みんなに帰ることを伝え私と健太は楽屋から出てマンションへと向かった