やさしい手のひら・前編【完結】

「よし、帰るぞ」

「うん」

私達は外に出た


「寒ーい」

暖かいとこから出て来たので、とても寒かった。白い息が出る

「亜美、寒い?」

「うん、やっぱり冬だね」

ギュッ

健太くんが私の右手を握り、
健太くんのポケットに入れてくれた
そしてポケットの中で手を繋いでくれている

「あったかい?」

「うん、あったかい」

なんだかホッしてしまう
こんな気持ちにさせてくれるのは、健太くんだけなんだ

心地よい空気を与えてくれて、
私を柔らかくさせてくれて、
どんな時でも私をいたわってくれる

だから私も健太くんにやすらぎを与えたい

「あのね…」

「うん?」

「明日、ライブ終わったら健太くんはどうするの?」

「うーん、親のとこには行かねぇからマンションで一人かな」

やっぱり戻らないんだ

「私の家に来ない?」

「俺?」

「もぉ、健太くんしかいないじゃん。一人にしておけないから…」

「毎年のことだから大丈夫」

「嫌なの。私が嫌なの」

「亜美の家族だっているし。新しい年を迎えるのに邪魔じゃん」

「邪魔じゃない」

どうしてか、わからないけど泣けてくる

「お母さんも連れておいでって言ったもん。だからうちに来て…」
少し考えてから

「わかったよ。ライブが終わったら行くから、泣かないの」

立ち止まっていた私の背中を押し、頭の後ろを撫でてくれる

「ごめんね。無理に言って」

「亜美の気持ちが嬉しいよ。一人じゃないんだって、亜美がいてくれるんだって…」

健太くん…

「ほら、亜美はいつもすぐ泣く」

「だって…」

「さあ、帰ったら一緒に風呂だぞ」

ほんとは嫌だったのかな?
そう思ったけど、一人にさせたくなかったんだ