「何やってんだ」

健太くんが走って駆けつけた

「やべぇ」

先輩達はまずそうに顔を反らし

「こいつが悪いんだよ。彼氏いるのに健太に近づくから」

「俺が勝手に好きなだけでなんで亜美に手出すんだよ!」

いつもの優しい健太くんと違い、
とても怖い声で先輩達を見た

「顔殴っていいと思ってんのか。女の顔に傷作っていいと思ってんのか、こら」

先輩達はあまりにも健太くんの声が怖く震えだしていた

「健太くん、もういいですから。私は大丈夫ですから」

私の声も聞かず、壁をぶん殴った

ヒッ

先輩達は泣き出してしまい、
走って屋上から出て行ってしまった

「亜美、ごめん」

いきなり私に抱きついてきた

「血なんてかすり傷なんでぜんぜん大丈夫ですから」

「亜美の顔に傷つけやがって」

パッと離れ、私の肩を掴んで見つめている
その瞳がとてもきれいで吸い込まれそうになる
一人で立ち向かったが健太くんが
助けに来てくれたことで急に我に戻り怖くなってしまい、
頬に涙が流れ落ちた

「亜美っ」

「凌」

抱き合ってはいないが、
健太君の手が肩にある
しかも向かい合わせになっており、
私は

「健太くん離して下さい」

「やだ」

凌が見ているのに、
先輩のすごい力で私はまた抱きしめられ
身動きができない状態になった

「亜美返して下さい」

凌の低い声がまたさらに低くなっているようで、凌は怒っていた

「亜美ちょうだい」

そんなこと言ったら凌がキレてしまう

「亜美は俺のです。俺も亜美もお互い必要なんで」

凌が歩きながらこっちに近づいて来る

その瞬間、先輩から私を奪った
私は凌の胸に飛び込み、しがみついた

「亜美、俺諦めないから」

健太くんがそう言って歩く後ろ姿が
悲しそうでなんとも言えない気持ちだった