それから由里と坂下は付き合うようになり、
やっぱり私は一人で帰ることが多くなった

あれから本郷とはしゃべっていない
遠くにいるのは見たけど廊下ですれ違うこともなく、
今日まで来たんだ

下校中、私の視界に本郷がいた
ずっと前を一人で歩いている
坂下が由里と帰るから本郷も一人なんだ
私と同じ。たったそれだけなんだけど、
ちょっとだけ嬉しかった

信号で止まっている
近寄りたくない
今は遠くで見ているだけでいい
また話をしてしまうと素直じゃない私になる

喧嘩になるならしゃべらない方がいい

自分にそう言い聞かせた

ゆっくり歩いたつもりなのに
私は本郷の後ろに来てしまった
気付かれないように少し離れて信号を待っている

その時、本郷が後ろを見てしまった

「…ツ!」

「居たのかよ~いるなら話かけれよ」

私にやさしく言った

「あっ、うん」

私は何を話していいかわからなくて、それ以上何も言わなかった

「慎達、熱いよな~毎日毎日一緒だぞ」

「そうだね」

私はそんな言葉しか見つからなかった

この間の『俺は…』と言う言葉が
グルグル頭の中を回っていて、
本郷の話を半分聞いていなかった

「お前、聞いてんの?」

ちょっと怒ってるぽい声で私を見た

私、本郷に見つめられると目がウルってくる