恋色語

その時、胸がドキッてなった。


「お前…何者?」


開口一番がそれかい。でも…吸い込まれそうな瞳。手を外して鞄を両手で持つ。

不意に、桜の花びらが風に乗って私達を包んだ。


「清淋(せいりん)高校一年二組の旭 渚。あんたは?」

「……」

「あんたはゲームの中の村人1ですか!?ほら、黙らない。同じ事も言わない」


ピトッ…

鞄を置いて、そいつの頬に両方から手を当てる。冷たい。春なのに私の手より幾らか冷たかった。


「同じ高校の一年五組、片桐(かたぎり) 怜(れい)」

「そ。じゃあ片桐君、学校行こっ。時間ないからダッシュでね」


鞄を持って行く素振りをするけど…その腰を上げてくれない。

あー!!どうしてこう電池切れ寸前のロボットみたいな態度なのよ!?


「片桐君ってさあ、学校面白くないと思ってる人?」

「…違う。ただ…俺なんかが行ってもいい場所なのかな」


よく分からない。でもそんなの言われたら…そんなのって。