恋色語

「あなたには分からないよ。何も知らないあなたには!」


神宮寺さんの瞳から涙が流れた。たった一筋。だけどそれに秘められた意味を私は知らない。


「…分かった。これ以上は片桐から直接聞く。それでいいでしょ」


背を向けて歩き出して数歩、すぐに腕を握られ止められる。


「ダメ!それが怜にとって一番の…」

「止めないで。私は後悔したくないの。誰からも片桐と関わったらいけないって言われて、全然納得いかないの」


神宮寺さんの手を払うとその場を駆け出す。いい、本人から聞いてやる。

それで理由が分かれば、少しは理解できるだろうから。神宮寺さんの涙の意味を。