恋色語

「ん?ああ、校門ならそこを左に曲がって突き進んで、右に曲がったところ」

「あ、ありがとう。また機会があれば会いましょう」


ザ・親切。…ていいから急がないと。きっと佐織が迷子になってると思う頃合いだよ。


それは避けたい。なるべく走って、走りぎみで、急ぐの…




ドテッ!!





「あ、すみません」




曲がり角でさっきとは違う男子生徒にぶつかった。その衝撃で転んじゃったけ…ど……この人も一年生…。

何…?その人は立ったまま微動だにせず、私をまじまじと見つめてる。


その時、時間が止まったような感覚に陥った。胸がドキッとなって。何…何なのよこいつ。


私も彼をジッと見つめてる。何だか立ってはいけないように、呆然と。


私の中では長い、長い時間が流れた。


「………」



不意に彼は目を反らし、私の横を通り過ぎていった。何…一体何だったの?


…スカート!?…でもない。ちゃんと見えてない。