恋色語

大切なのは過去じゃない。片桐がそこから何を考えたか。

そして…どうして私を受け入れたのか。


「…悪かった」


「私も…ごめんね。…じゃまた友達ということで。あ、この傘ありがとうね。にしし」


良かった。私が笑うと暗かった顔が少し晴れた。

もう嫌悪感は一切なくなった。謝ってくれたんだからそれに応えなきゃ。


「怜ーッ」


ん?あの娘確か…朝片桐と一緒に登校してた娘だ。慌てて繋いでた手を離す。


「あの、帰るなら帰るって…ッ!?」


何だろう。その娘は私の顔を見た途端、言葉を失うくらいに驚いた。


「え…そんな…」

「彼女さん来たから私帰るね。はい、やっぱり傘返す」

「彼女じゃない。幼なじみの神宮寺(じんぐうじ) 瀬奈(せな)。それに、傘なら瀬奈が持ってるから事足りてる」


そっか。でも一本だと多かれ少なかれ、神宮寺さん濡らせちゃうでしょ。


「あの…5組の神宮寺といいます。明日返しにきてくれたらそれでいいので、私の傘お貸しします」