恋色語

私は聞きたい。どうして傘を渡してくれたのか。以前なら考えられないから。


「会いたいから会う」


そんなのに理由なんてない!!いらない。私の勝手だ!


「行かなかったらきっと後悔する。なら…後悔しない道を選ぶ」


決心し、再び駆け出した。急げ…早くしないと行方が分からなくなる。

校舎を出ると、まだ校門に姿があった。



ビチャビチャバチャッ……。


水溜まりを踏もうが、大粒の雨が私に降り注ごうが関係ない。

今は…今はそんなことより…


「待って!」


片桐と…ちゃんと会わないと。やっと掴んだそいつの腕は、ひどく冷たかった。


「………」

「待ってって…ばぁ!」


無言で私の手を振りほどいて先を行こうとする片桐。

正面に回って両手を広げると、なんとか止まってくれた。


「…お前バカか?傘の意味ねえじゃん」

「はぁ…はぁ。私だって好きで…ずぶ濡れになってないっつーの」


無我夢中で、傘さし忘れてた。私もだけど、これ以上片桐を濡らせば風邪を引いてしまう。