恋色語

「それ、聞きあきた。みんなが同じ言葉を口にする。

どこかで聞いたか、すぐに思いつく言葉だ。お前も同じか、旭」


今の片桐はあの時みたいだ。公園で一人ぼーっとした時の。

透明で、消えてなくなりそうで。きっと質問には深い意味がある。

深く、私にはとうてい分からないような。でも片桐にとっては大切な質問だと思う。


「…そうよ、今は同じだよ。私はあんたがいなくなっても別に困らないもの。

けどね、逆に聞くけど、片桐の世界に私はいるの?」

「いない。と言ったら?」

「無理に入る。存在感を大いに表す友達としてね。そして毎日学校に来させる。

…あんたの言う世界ってさぁ、こっちがどんなにドアを叩いても片桐が応じないと開かないよ?」


片桐を残してはしごを降り始める。入口の前に立って上を見上げると目があった。


「いわばあんたは鍵を閉めて立てこもってるのよ。

ドアを開けていれば、消えちゃいけない理由ができて、大切な人もできるだろうけどね」