クリスマス・イヴに息を引き取った五月ちゃん。
 その時、隆志君は涙一つ見せずに、ただ一言だけを彼女に告げた。


「ありがとう……五月」
 その言葉の意味は、私には到底分からないものだった。でも、笑顔で息を引き取った五月ちゃんも、それを笑顔で見送った隆志君も、少なくとも後悔だけはしていないように見えた。


 通夜、お葬式と、年末の忙しさの中で、彼女を天国に送り出す儀式が執り行われ、それに私も隆志君も無言で列席した。


 正直、五月ちゃんがいなくなった事は、私の心に大きな穴を空けたみたいだった。
 それは多分、隆志君も同じだったんだろうと思う。


 そして年が明けて元旦、年賀状を無造作にチェックしていた時、私の家の電話が鳴った。
 電話に出るのも、正直言って億劫だった。それくらい、私の中で五月ちゃんの存在は大きくなっていた。


「もしもし……」
 私が電話に出ると、聞き覚えのない声の女の子が話し掛けてきた。


『あ、もしもし、みいちゃん? あたし、同じクラスのケイだけど、一緒に初詣に行けないかなって思って……』
 ケイちゃんは確かに同じクラスの同級生だけど、今まで話した事、何回あったかな?