「……深刻な状態です」
 救急車で担当医のいる病院に運ばれた五月ちゃんの容態を見た担当医は、事情を知っていると言った私に、暗い表情でそう言った。


 五月ちゃんは痛みを紛らわす為の薬――と言っても末期の癌患者に投与される麻薬だ――を注射されて、一応落ち着いた。
 その病院の一室で、様々な医療器具と繋がって眠っている、五月ちゃんと私を前に、先生は絶望的な言葉を発したのだ。


「……し、深刻な状態って……」
「ハッキリ言って、もういつまで持つのか、保障できません。早ければ数日中、長くても一ヶ月……それが限界でしょう」
 私は目の前に、信じられない現実を突きつけられた気になっていた。
 今までも十分、五月ちゃんが背負ってきた、苦しみや悲しみを感じてきたつもりでいた。
 でもそれは、ただの想像でしかなかった。実感ではなかった。


 でも今は私の感覚に直接叩き込まれている。彼女は死ぬ。死んでしまうのだ。確実に、最早逃れる事は出来ない。そんなタイムリミットが近づいていたのだ。