一日、一日がごく当たり前に過ぎていく。
 毎日、毎日がこんなに楽しくて、そしてこんなに苦しかったのは、生まれて初めてだったと思う。


 冬の足音は確実に聞こえていた。


 つまり、五月ちゃんの命に「死」という刃が突き刺さるまでの期限もまた、確実に近づいていた。


 良く観察していると、五月ちゃんの変化に気付いてしまう。
 ちょっと前まで線は細くても痩せてはいなかった五月ちゃんは、目に見えて痩せていっていた。そして桜色した唇も少しずつ土気色に染まっていく。


 でもそれは少しずつの変化だった為か、隆志君には伝わらない。
 伝えてしまえたらどんなに楽だろう!
 彼女の苦しみを代弁して!
 この鈍感な男の子を怒鳴りつけられたら!


 どれだけ……そんな事をしたら……彼女を苦しめてしまうのだろう……?
 いつもそこに私の思考は辿り着いて、行き場を失ってしまう。


「みいちゃん?」
 私には一目で分かってしまう。それくらいにはやつれているし、それを五月ちゃんは一生懸命メイクで隠していた。


「あ、はい……どうしたんですか? 五月ちゃん……」 
 呆然としていた私の意識を、五月ちゃんの言葉は現実に引き戻す。今日は十二月二十四日。世の中はクリスマス・イヴ一色だ。私には彼氏はいないから関係ないけど。
 二十三日には終業式だったんだけど、今日は補習だから仕方がないんだよね。