「…私も、記憶を取り戻して気がついた。お兄ちゃんを、ずっと生かしてきた」


……………。


「けれど、もう良いの」


いくつ涙を流せば良いのだろう。


いつになれば、悲しみは消え失せるのだろう。


どうして人は、苦しみながら、決断しなければならないのだろうか。



「――――海渡を、守る。水玉世界も守ってみせる。
 優斗の…魂があるから…」



「カンナ――――…」


強く胸に抱いて。


カンナは声も押し殺すことが出来ぬまま、ただ泣いた。


お兄ちゃん、お兄ちゃんと。


無くなってしまった空虚の存在を、悶え求めて。