「いつでもしろよ!」
樹君は、あたしと腕を組む体勢になり、
あたしの髪の毛をクシャクシャにした。
泣きながら笑うあたしは、
この瞬間が、すごく切なく思えた。
大好きだったよ、樹君―――…
婚約の日は、その次の日だった。
「こ、こんにちは……」
「お待ちしておりました、高林様」
叔父さんに教えてもらった通り来てみると、
目の前に、一軒…いや、超大きい一軒の家が建っていた。
おぉっ、とあまりの迫力に足を引く。
これは豪邸!? お城!?
庶民で、しかも貧乏だったあたしには考えられないほどのスケール。
なんとなくプレッシャーがかかった。
ずらりと並ぶ執事さんやメイドさん……
みんなあたしに頭を下げて、「様」を一々つける。
うわ、なんかお姫様気分。
ちょっと警戒しながら、
案内してくれる執事さんに着いていった。
「あちらがリビングです。
リビングには成希様がいらっしゃるので、お顔をだしてください」
「あ、はい」
執事さんが差すのは、家のリビングの5倍以上広い部屋。
そこが、リビングなんですか!?
