シンデレラは、王子様と突然出会った――…




「高校生で婚約って…

幸奈、大胆だなぁ」

「樹君、これはあたしの家族を守るためだよ。

別に彼氏とするワケじゃないからさ」



バイト先で知り合った樹君に、

あたしが婚約する事を話した。


さすがにまだ高校生なのに、

婚約なんて大胆! って言われるのはなんとなく想像つく。


けど、家族を守るためだから。


こんな良い話、もうないかもしれないじゃん!


最後のお皿洗いの仕事を、

いつもより念入りにした。


これで、お皿洗いも最後……。


本当はお皿洗い嫌いだけど、

今日は俄然やる気になる。


これで、最後―――…


そう思うと、樹君とか他のバイトの友達と会えなくなるの寂しくなってきた。


「…はぁ、その婚約するヤツ、

お金持ちで、イケメンで、なんでもそろってる完璧王子様だろ?

すげぇヤツと結婚すんだな」

「あ、うん。

おじさんがそこのおじさんと仲良くて、

婚約勝手にされたってか……」


苦笑いをしながら、

お皿についた泡を水で流していく。