彼の名前。




一気に溢れ出した言葉を、森下はちゃんと聞いてくれていた。

何も言わなかった。

多分、あたしが涙を流してしまったから。

あたしが、静かに涙を流したから。


「森下ぁッ」


あたしが一番つらいのは、君が兄妹って事だよ。

お兄ちゃんって事だよ。

泣きだしたあたしを、ギュって抱きしめてくれる君が、兄になってしまった事だよ。


「いいよ。拓也で」


嗚呼、彼が優しすぎたからいけないの。


「俺も、愛華って呼ばせて」