彼の名前。





彼は、初めからあたしが妹になることを知っていたようだ。

あたしの顔を見ると、少し悲しそうに小さく笑った。


「・・・・・森下」


ふと呟いた言葉に、反応したのは母親だった。

彼女が再婚なんてしなければ、あたしだって彼だって、つらい思いをしなかった。


「あら?愛華、知り合いなの?」


知り合いも何も。

この人は、元クラスメイトだ。

小学校四年生の時、同じ、クラスだったのだ。


「いや、うん。クラスメイトだった・・・・」

「あら、そうなの。よかったじゃない、知り合いで」


そう笑った母親を、心底恨んだ。

何もわかっていない。


知り合いが兄になるなんて、なんて窮屈なんだろうか。