母の思っているようなことは何も起こっていないと。


でも、言えなかった。


森の精霊のことが好きだ、など、言えるはずがなかった。


母は信じてくれないだろう。


少年は、言えなかった。


少年には、ほんの少しだけ、勇気が足りなかった。






春になり、少年が森にやってくることは、少なくなった。


少女は、寂しさを胸の内にしまって、
平気なふりをした。


それは、少女の覚悟していたことだった。