精霊のいる森で。

「私はこの森の、精霊なの。
…昔は、あなたのような、人間だったけれど。」


少女は、自分が寒さも暑さも感じていた頃のことを思い出した。


その時は、寒くても暖かかった気がする。


「あなたは、一体どんな人だった?」


少年が、少女に聞いた。


愚かな質問だ、少女はそう思った。


そんなこと、私が答えられる訳がない、と。


ただ、少女は一言だけ、答えた。


「私は、ごく普通の、女の子だったわ。」


今でも、そうだけど、と少女は付け足した。


今ではもう“女の子”ではないかもしれないけど。