精霊のいる森で。

少女はこの小瓶を昔自分に渡してくれた旅人のことを覚えていた。


とても優しい人だった。


その時、少女はまだ幼くて、
親を失ったことに悲しみを抱いていた。


そうして祖母のいない時に、
1人でひっそりと泣いていたのだ。


そんな少女に、旅人は音楽を聞かせ、
遠い町の物語を伝え、
珍しい物を見せてくれた。


少女は旅人のことを慕っていた。


旅人は少女に蜂蜜をあげたことがあった。


少女はそれをとても気に入った。


だから、旅人が村を去る時に少女にくれた蜂蜜の小瓶は、
大人になるまでとっておこうと、祖母に預けたのだった。


「大人になったら、渡してね。」


そう言って。