精霊のいる森で。

少年は声を振り絞って問うた。


少女は少年の目の中に、恐れを見た。


少女は残念だった。


自分が恐れられていると知って、肩を落とした。


「いいえ。私は“森の精霊”。」


「“森の王”は??」


「そんな者、この森にはいないわ。
いえ、いたけれど。」


少女は蘇る昔の記憶を頭の中で繰り返した。


触れた途端に消えてしまう人。


もう私はあれを起こさないのだろうか、と不安になった。