誠一は、いわゆる普通のサラリーマンをやっている。

昼休みは、会社近くにある梓のショップ――手芸品を主に扱う雑貨屋――にランチを食べにやってくる。

雑貨屋、といっても客足は少ない。

売上の半分以上は、通販事業で賄われている。

梓も、レジを打つことはほとんどなく、多くの時間をパソコンに費やしている状態だ。

「雑談してる場合か?」

絶え間なくパソコンを打つ梓に、誠一は呆れながら弁当を広げた。

「平気。もう終わるから、お茶入れるね」

実際のショップやネットショップを切り盛りしつつ、こうして手作りのお弁当やこだわりのハーブティーを入れる、梓のバイタリティの強さに、誠一はいつも驚かされる。