そのことを、梓に報告すると、手を叩いて喜んだ。

けれど誠一は、獏の夢のことは言わないで置いた。

夢の中の出来事だ。

今まで、現実しか見てこなかった自分がどうにかなってしまったのか、と思われるのが嫌だった。

「良くなるといいね」

「ああ、言葉も麻痺も、残らないことを祈るよ」

そうだね、と梓は強く頷いた。

「そっちの仕事はどうだ」

相変わらず、パソコンに張り付いている丸い背中が心配になった。

「新しいこと始めたから、ちょっと落ち着かないかなー」

「今日は、帰れるのか?」

「んー、明日には帰れるよ」

「わかった」