「3人のお子さんがいるとは聞いていたが、ようやくお会いできた」

「……放蕩息子ですから、俺のことはみんな隠したがったでしょう」

「いえいえとんでもない。美世子さんが子供の話をするときはいつも、貴方の話をしていたものだよ、誠一くん」

誠一は、少なからず驚いた。

家を飛び出して十年、一切の連絡をよこさない母は、自分を見捨てたと思っていた。

「……唐揚をね、作ってくれたんだ。指輪を渡したその夕食の席で」

ぽつりと、高城が言った。

「この年になると油物はきつい。それでも、皿いっぱいに揚げた唐揚を、美世子はじっと見つめていた。なにやら、深い思い出があったのだろうか」