「選択を、与えられたようですね」

あの、朗々とした声が背後から聞こえた。

「夢は2種類あるのはご存知ですね。現実での夢――すなわち将来の願望を叶える力を、貴方に与えられます」

「夢を叶える力、」

「はい。富や名誉を手に入れたい、といった夢を叶える力です。現実のルールに則って、ある程度の夢を達成することはできるでしょう」

しかし、と男が告げる。

「当然、代償はつきます」

「代償、」

「眠りで得られる夢です」

「どういうことだ」

「現実での夢を叶える代償として、今後、貴方に平穏な眠りの中の夢が訪れることはありません」

男は、あくまで淡々と言葉を発していた。

しかし、それがひどく重い言葉だというのがよくわかった。

「獏に、貴方の夢を伝えれば、それは叶えられるでしょう」

獏は、ただ静かな目で、誠一を見つめていた。

「夢を代償に、夢を叶えましょう。貴方は、いかに選択いたしますか」

誠一は、答えを出せなかった。