――そんな誠一に、昨夜、梓はその小袋を差し出した。

「これで、いい夢が見れるといいね」

梓は、そう言っていたずらっぽく笑っていた。

それが、彼女の笑顔だ。

付き合ってから1年、変わらない好奇心に満ちた笑顔。

未だに火照りの残る状態で、そんな笑顔を向けられては無下に返すことも出来ない。

誠一は、肩を竦めながらそれを受け取るしかなかった。

「いい夢、って一体なんだよ」

よく、夢の中で空を飛んだことがある、などと聞いたことがあるが夢を見ない誠一には縁の無い話だ。

別段、羨ましいとも思ったことも無い。