「俺は、あれが夢だったのか実感が湧かないよ」

「でも朝、目が覚めたわけでしょ。ベッドの上で」

「そうだな」

「じゃ、そっちが現実ってことはありえないでしょう」

確かに、と誠一は苦笑した。

「でも、誠ちゃんがうまれて初めて夢を見たっていうんだから、あのお守り本物ね」

と、梓は仕事に戻りながら嬉しそうに笑った。

「わからないだろう、たまたまかもしれないし」

梓は聴く耳を持たないようだ。

誠一は、仕方ない、といった様子でネクタイを締めなおした。

「じゃ、俺、会社戻るわ」

「うん。今日も忙しいからこっち泊まるね」

「わかった、ほどほどにな」

誠一は、梓の店を後にした。