ユメクイ

「未熟者、我の姿がわからんか」

その深い声が、獣から発せられているのも確かなようだ。

「夢ってのは、動物もしゃべるんだな」

真っ黒な獣は、くっくと喉の奥で笑ったようだ。

揶揄するような、それでいて腹に響くような深い声。

だが、誠一は急速にその非現実から遠ざかるのを感じた。

獣の声だけが、残響のように響いた。