ユメクイ

「我には、挨拶もなしか」

驚くほど深い声が、男の足元から響いた。

そこには一匹の獣がいた。

――獣、としかいいようのない生き物だった。

なんせ、直視しているはずなのに、姿が捉えられないのだ。

犬くらいの大きさの、真っ黒な獣。

誠一が判断できるのは、そこまでだった。