深夜の海が静かに見えるのは、
あの果てし無く遠い大きな光源の下に、
仰向けに揺れながら浮かぶ君を、
一緒に見ているからだ。

〝余命三ヶ月〟

 メールなんかで、
そんな事を伝えて来るなんて、
近代文明は、本当に余計な事をしてくれる。
文字にすると、漢字五文字。
月日にすると、半年も無い。
人生にすると、あまりにも、あまりにも、
トホホな話。

 僕は罪を犯しているのだろうか?
嘘も、争いも、差別もする。
肉も、魚も、野菜も、食べる。
そして、君に言われるがまま連れ出している……。
トホホな事態。

 いつから余命は、
始まっているのだろうか?
医者から、親族から、本人に告げられた時からになるのだろう。
医者と、親族の間から本人に告げられるまでのタイムラグが、恐い。
余命があるとすれば、まだ動ける内に、長い期間残されている内に、
告げられる事。
それを彼女は、望んだんだ。

 周囲は暗く何も無い海上で、どれだけ大きくても距離がある分、その光は頼り無い。それでもその光は何も無い分、君だけに注がれている。
海と、空に続く光に包まれ、穏やかに揺れ踊る君は、この世の綺麗な所を、一点に掻き集めた≪器≫に見える。高級すぎる器は勿体無くって、何も乗せる事が出来ないってね。

 死を覚悟した者に与えられる器だろうか?

 いやいや、元々絶世の美女でしたよ。
僕が言うんだからそれはそれは、間違いない。

だから、