「血の匂いがします」

突然。

その修道女は告げる。

無論ここには修道女と俺しかいない。

その言葉は俺に告げられたものなのだろう。

そしてその言葉も的を得ていた。

英国の名門テーラー、サヴィル・ロウのオーダーメイドのスーツを着こなしていようと、下品にならない程度にコロンを身に纏っていようと、決して隠し切れない。

俺は常日頃から『血を飲んでいる』のだ。

血の匂いがするのも当然の事。

修道女は真っ直ぐに、俺を見据える。

その時になって初めて、この娘が盲目である事、そして目を見張るほどの器量の持ち主である事に気づいた。

「千年真祖(サウザンド・デイライトウォーカー)、来栖 恭太郎に間違いありませんね?」