さよなら拓ちゃん。
あなたといれる時間はあと一時間……ーー。
「ねえ、拓ちゃん」
「ん?」
「あと一時間だね。早いや」
「つかさ声かれたわ」
「あはははは(笑)わ゛だじも゛でずー。なんちゃって…」
「何言ってんだよ。アホが。」
「ねえ、カラオケ何歌う?」
「じゃあ、また会おう。歌ってやる」
“また会おう”っていう曲は、昔、拓ちゃんのお母さんの歌なんだって。
拓ちゃんのお母さんは、歌手だったから……ーー。
「沢田泣かせる気?」
流香が聞いた。
「んなこちゃねえよ。まあ、お前らにはこの歌聞いてほしいからよ」
もうすでに泣きそうだ私。
歌詞がながれていく。
君に会えたこと
それは奇跡だと思ってるよ
楽しかったあの頃…君は覚えてるか?
僕は忘れられない、いつだって
覚えてるよ、絶対忘れないから
君にとって僕はどういう存在だったのかな
僕にとって君は、大切な人だよ
ずっと…いつか戻ってくるよ
待っててね
「みんな、またな」
みんな号泣。
「じゃ、俺行くわ。ごめんな。急いでて…。あ、俺が何で、パリに行くか教えてなかったから言うけど。夢があるんだ。歌手になる夢を叶えるために修行してくる。母さんと父さんとパリにいってくる」
「「が、頑張れー!」」
私、夢なんてないからこそ、拓ちゃんを応援したい。