――カランカラン♪
軽く弾んだ音を鳴らすドア。
スッと高い身長にハット帽と黒縁眼鏡をした男の人が入って来て、すぐ近くの席に座った。
「カフェなのにりんごジュースかよ」
その人は明らかに私を見てフッと笑った。
「いけませんか?」
ちょっとイラッとして声の方向へ睨み上げた。
「別に。テレビでの美人で可憐に歌う歌姫と現実とのギャップに驚いただけ」
……!!
なにそれっ!
私がりんごジュースを飲むのは可笑しいのっ!?
「好きなものを飲むくらいいいでしょ?」
知らない人なのに、ベーっと舌を出して膨れるとさっきよりも馬鹿にしたような笑いをしていた。
「まじ、お子ちゃまじゃん!あっ俺コーヒーでっ」
コウ君は私達のやり取りに軽く笑いながらコーヒーを煎れはじめた。
確かに私は19歳だし、コーヒーも飲めないけど、知らない人に馬鹿にされる覚えなんてないよっ。
「世間から見たら美人な歌姫も実際は可愛い女の子ってことか」
クスクスと笑う男の人。
「か…かわい…///ってそうじゃなくて!」
やばい、ついつい可愛いなんて言葉に乗せられるとこだった。普段可愛いなんて言われないからびっくりしちゃったよ。
「面白いんだね、姫」
ひ…ひめ…?
