「また来たのかよ」



ツンとした冷たい声を発したのは七海行(ナナミ コウ)

2つ年の離れた実のお兄ちゃんです。


明るい髪にパーマをかけてカフェっていうより美容室とかショップ店員をやっているような雰囲気の人。




「いいじゃん~」



唇を突き出していると隣から
「コウく~ん」
と言う甘い女の人の声が聞こえてきた。




「ほら呼んでるよ、コウ君」




昔からお兄ちゃんなのに名前で呼ぶから恋人なんかにも間違えられちゃう私達は、もともと色素の薄い瞳以外あまり似ていない…と思う。





私はコウ君の出した大好きなりんごジュースを一口飲んでから変装用のサングラスを外した。


この落ち着く空間でのんびりと詩を書くのはいつものこと。





大きなことは書きたくなくて、日常に咲く小さな詩を、誰もが抱く気持ちとか疑問とかそういうのを書きたいって思うの。



私は何年経っても変わらない凡人だから。


不安な気持ちを和らげる紅茶の味とか、街でかっこいい人とすれ違った時、ついつい振り返っちゃうこととか




そういうことに共感してくれることが私の幸せ。