白雪姫のキスは甘い蜜






カフェを出て地下鉄で2つ先の駅へ向かう。




芸能人になるとタクシーとか車ってイメージ持たれるし、実際そういう人もいるけど、普通に電車に乗ってる人って結構いる。



私もその一人。




マネージャーの森山さんは、「車で迎えに行きますよ」なんて言ってくれるけど私はいつも「変わらない普通の生活でいたいんです」と答える。


テレビに出たり、街中にいると時々バレて声を掛けられたり………この業界に入って変わったことは多い。


刺激的な日を送れるって言ったらそうだけど、やっぱり変わないでいてほしい部分も結構あるわけで…





高級そうなレストランに行くんじゃなくて、安いファミレスとかファーストフードとか時々行きたいし、当然今みたいに電車にだって乗りたい。


そういう普通の人が感じる“当たり前”をいつまでも“当たり前”と感じていたい。


それが小さな幸せだったりするし…いい詩を書くことにも繋がるんだ。






ガタゴトと揺らされる電車は時間帯のせいか半端ないほどぎゅうぎゅう。




『次は――――…』
というあの電車特有のフレーズを聞いて狭い車内を出た。


一歩足を出すと車内との空間の違いに体が羽ばたくように自由なのを感じる。







「やばいっ。早くしなきゃ」



皆は帰宅でも私はこれから出勤なんだ。


足を速めて駅近くにあるテレビスタジオに入った。





今日はこれから生放送の歌番組がある。