いつも通りの朝。
いつも通りの時間帯に、いつも通りの登校。


「翔ちゃん。亜子、彼氏できた」


そして、いつも通りの亜子からの報告と―――…


「どぅえええーー!?」


……いつも以上の椿の反応。


「うわッ。椿君、びっくりするじゃん!!」

「ごめん亜子ちゃん!でも、彼氏って…」

「近くの高校の人」

「近くの高校ってどこだよ!?つーかそもそも亜子ちゃんって…」

「わかんない。そーえば、教えてくれなかったなぁ」


左斜め上を見る、亜子お得意の考える仕草。

普通だったら、――隣にいる椿の様に――顔を真っ赤にさせて照れてしまう仕草だが、見慣れた俺は何も感じない。

それよりも、亜子の彼氏できた発言のほうが俺は気になってしまう。


「亜子、昨日の彼氏はどうした?」

「……あっくんのこと?」

「(あっくんだっけ?)」

「あれ、違う??」

「そんな感じの名前の奴。昨日、デートだったんじゃないのかよ」

「……」


亜子は、顔の作りが良い。とてつもなく良い。
下手したらモデルも夢じゃないんじゃないかってくらい…は、言い過ぎか。

可愛いという類に入る亜子は、身長もそこそこ、性格はまぁまぁ、成績はダメダメという3連チャンをかまし、守ってあげたくなるらしい。

俺、松川翔は亜子とは腐れ縁っていうか、ご近所の好っていうか、進路が被ったというか。
まぁ、切れない何かで無理矢理くっ付けられている。
チビの頃から知っている亜子を今更可愛いとかの目では見れない。
あ、まぁ、可愛いは可愛いんだけど。女としては見れない、みたいな?

亜子もそれは同様らしく、俺を男として見ない。
放課後、俺より先に俺の家に帰り、俺より先に飯や風呂を済まし、俺の部屋で寛いでいる程に。