昔は自分の意見をちゃんと持ち芯を曲げない男らしいお方だった。

その自分の意見の中にもちゃんと他人の意見も混ざっていて、
大勢の武士をまとめるのに適した人材だった。

自分だけでなく、他の人間のために動ける、
そこにひかれた。

昔から他人の意見を聞くことはよくあった。

しかし、最近は自分の意見を全く持たず
他人に聞くばかり。

それを見かねた保次郎は自分で、自分の意見で
鳳上院家の生き残りを抹殺に出かけた。

しかし、保次郎は今は囚われの身。

今回のことでも主はあまり動こうとしなかった。

また、私の意見を聞こうとしている。

本当にこの人がやりたいことはなんなんだ・・・??

雅皇が考えに明け暮れる中、恭治は
じっと、雅皇を見つめていた。

そして、口を開いた。

「雅皇。お前が考えるほど、俺はできた人間じゃない」

その言葉に雅皇ははっと顔を上げた。

そこには何の感情も見いだせない、
無表情の主の顔しかなかった。

今・・・?

「俺にだって見られたくない思いってのがあるんだよ。

 雅皇、分かるか?
 裏切りたかったらいつでも裏ぎりゃあいい。

 でもな、あんまり他人の領域に足を踏み入れすぎるな」

ぐいっと主の顔が近くなる。

そして低く凛とした声が響いた。

「自分の考えが音を立てて崩れていくぞ。

 自分のままでいたいってんだったら、
 まずは、他人のことより自分のことを考えるんだな」

分かったな、そう言って主の顔は遠くなった。

雅皇は意味が理解できなかった。

自分の考えが音を立てて崩れていく?

ばかばかしい。そんなの私に限ってあるわけがない。

何度も何度も考えて見つけた答え。それが私の考えだ。

そんなものが糸もたやすく崩れていくわけがない。

やはり主は最近変だ。

雅皇は自分の主の言葉を理解できないまま、一瞬にして
自分の考えが崩れていくことを
まだ、この時は分かっていなかった。

分かっていたのは我が主だけ。

その時、主が思いつめた顔をしていたなんてことを雅皇はきづかなかった

俺は本当にこれでよかったのだろうか、鈴---------------------