徐々に気持ちが落ち着いてくる。


「もっと、もっと、出さなきゃ」


ポトポトと落ちる血液に完全に囚われる。


「もっと深く…」


力を込めた瞬間、開きっぱなしだったドアから母が飛び込んできた。


仕事から帰ってきて、不自然に開く私の部屋を覗きに来たらしい。


「やめて!ハルカ!なにやってるの!?」


私からカミソリを奪って母が手首の傷口を手で押さえる。


「どうして…!どうしてこんなこと…!」


取り乱す母の声が遠く感じる。


「病院行かなきゃ!」