「そんなに、その紙が大事だったのか?」



返答を待ったが、返されたのは
頷きだけだった。


「喋れないのか?」

「……。」
フルフルと首を振る。

「人恐怖症か?」


フルフル。

「じゃあ、男嫌いか?」

フルフル。

「じゃぁ…


  話すの嫌か?」



コクン、と頷いた。


「そうか…。」










あの日屋上であった時とはまた違う、

弱弱しい姿に眉をひそめる。



(どっちが本当だ…?)







思案していれば、今にも女は逃げ出そうと足を進めていた。










まだ、

まだ話したい……













柾の手は、女の腕をつかんでいた。